「No man's land」直訳すると「無人地帯」いわゆる立ち行ってはならない場所なのです。
手外科の領域においても「No man's land」が存在する。 それは指の第2関節から手掌にかけての腱損傷の治療の事で一昔前は何人も手をつけてはならない場所として外科医の間では知られてました。 腱損傷と場合、腱の縫合自体はそんなに難しい事はありませんがこの場所においては腱を縫合した後、必ず縫合した腱ががちがち周囲と癒着しとても動く指にはならず、治療成績が悲惨だったからです。 しかし近年の手外科の専門性とリハビリ法により「Some man's land」となり手外科の熟練した術者、リハビリスタッフにおいて治療の可能性があり治療できるようになってきています。
私も勤務医時代、特に大学病院時代は手外科グループの一員でこの「No man's land」に痛い目にもあいその怖さをしり、その本場のセラピストのリハビリについての講義を受けその手法を勉強してきました。
私が田中外科に来てからは「No man's land」の腱損傷なんぞはほとんど無縁でおそらく10年で2例ほど? 当時はリハ施設が無く全てを自分でやってストレスを感じ、もし「No man's land」がきたら促大きな組織に搬送と決めていました。
ところが8月の終わりに急患の手の外傷の方が来られ、よくよく診てみると環指、小指の「No man's land」での4本の屈筋腱損傷+指神経損傷で指は曲がらない! 直ぐに脳裏に転医先をとシュミレートしましたがこのご時世と枚方の医療事情・・・手外科にとってはあまり恵まれてない?
大学病院の医師不足のあおりで当院から1Km程の関○医大枚方病院も唯一の手外科医であり私にとっての恩師でもあるK先生がこの6月から香里病院に転勤・・・。 当院に週1回来てくださる樋口先生、彼も厚生○金病院の手外科の主任だが時間外だし・・・緊急opを受け取ってくれる確信もなく・・・。 それならある程度の経験とその分野を専門とする当院で治療を行うことが最善と考え手術になりました。
久々の「No man's land」気合いが入りすぎ、得意のねちっこい正確で病的に細かく綺麗にかつ強固に縫合してしまいました。 後は運を天に任せ・・・ではなく個人クリニックのメリットを最大限に利用し、できるだけ毎日患者様には来院して頂き、これまたねちっこく毎日観察させて頂きました。 最近では早期運動療法と言う術後いきなり動かす方法もあるが文献的には今までの方法と較べて明らかに有意な利点も無く? 今回は経験のあり勝算のある?Kleinert変法という術後リハビリメニューにて後療法を行う事にしました。
印象:やはり「No man's land」における腱損傷の極意は如何に強固に丁寧に腱縫合、そして方法はどうであれ何より術後頻回に(できれば毎日)患者をみて指を触るのに限ると思われました。
本日から装具もとれ本格的なリハビリが始まります。
By 院長